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No.210  モロ 師岡(もろ もろおか)

俳優

どんな端役であっても “光る役者”でありたい

真剣な気持ちを常に大切にして、コツコツと歩んできた役者への道

たとえば映画では、あの北野武監督の『キッズ・リターン』や『DOLLS』をはじめとする数々の作品に出演し、『中学生日記』など多くのドラマやCMにも出演。その他にも、ひとりコント・サラリーマン落語・しみじみフォークソングなどを行う舞台『ひとり寄席』を開催するなど、幅広い分野で活躍している俳優のモロ師岡さん。現在51歳。もう30年以上も役者を続けているベテランです。
モロさんは、中学生の頃からテレビに出ている落語家や芸人、役者に憧れていて、人を笑わすことが好きな、いわゆるクラスのお調子者でした。そして専修大学に入学して間もなく、少林寺拳法部の先輩の勧誘を逃れるため、モロさんは「もう演劇部に入ったんです」と些細な嘘をつきました。これが、モロさんの役者人生のスタートになりました。
「ひょんなことから演劇部に入りましたが(笑)、興味はあったし、負けず嫌いなので、思いきり真剣にやりました。そうしたら1年で良い役をもらえるようになり、『もっとうまくなりたい』と強く思って。それからは劇団に入り、大学は1年休学。役者を目指し、とことん突き進みました」
そして大学卒業後、モロさんは先輩の芸人さんに促され、劇場で住み込み修業を始めました。
「もう本当に〝修行〟でしたね(笑)。朝10時から夜10時まで、劇場の雑用をしながら、ショーの合間にコントをやらせてもらって。でもお客さんは自分なんてまったく見に来てないわけで・・・。いや~、本当にキツかったなぁ」
劇場にはモロさんの他にも芸人・役者修業の人が他にもいましたが、多くの人は辛く厳しい修行に負け、夢を諦めて去っていきました。でもモロさんは、「不器用だったから、他のことができなかったんですよ」と、修行をひたすら続けました。やがて劇場が閉鎖し、テレビ局の制作スタッフに声を掛けられ、バラエティ番組の前説(収録前の観客に対して、拍手や笑い声のタイミングなどを説明すること。会場の雰囲気を良くするために漫才やコントを行うこともある)を経て、数々のテレビ番組やドラマなどに出演。コツコツ歩んできた役者への道が、大きく開き始めました。
「役者の気持ちは、スクリーンや画面、舞台から、お客さんに伝わります。力が入っていることも、抜けている瞬間も。だから、その真剣な気持ちだけは常に大切にしてきました。そして、その作品に自分が出ていることによって、お客さんに何かを感じてもらえるような役者になりたいですね。どんな端役でも、監督が思ってもいないような〝光り方〟をする役者でありたい」とモロさんは熱く語ります。冒頭で記した北野映画への抜擢も、こうしたことを30年以上、真面目に続けてきた証と言えるでしょう。

もう荒川区にすごく詳しくなって、すっかり楽しんでます

モロさんは、約10年前に南千住に越してきて、荒川区民となりました。
「最初に越してきたときは、いろいろ驚きました。汐入なんて、今じゃ考えられないくらい何もなくて(笑)。そしてコツ通り商店街とか不思議な名前の商店街があるかと思えば、いきなりドナウ通りができたりしてね。『ドナウ川じゃなくて隅田川じゃないか!』って思わずツッコんじゃいましたよ(笑)。ま、隅田川沿いは毎朝体力作りのためにジョギングしているので、お世話になっているんですけどね。あと、ここ10年で荒川区っぽくない(笑)綺麗な商業ビルがたくさんできましたよねぇ。そうそう、旨いホルモン焼き屋さんが入ってるビルもあるんですよ・・・ってあれ?悪態ついてるわりに、オレ、荒川区にすごく詳しくなって、すっかり楽しんでますね、アハハハ」
荒川区のことを少し聞いてみたら、何倍にもなって詳しい面白話が返ってきました(笑)。また町屋出身の奥様(コメディエンヌ女優の楠美津香さん)も、汐入小学校と第三中学校にて、図書ボランティアで読み聞かせ会を行っているとか。ご夫婦揃って〝荒川区愛〟に満ち溢れる、モロ師岡さん。
今回のインタビューでは、常に笑いを交えながら楽しい話をたくさん聞かせてくれました。スクリーンや舞台でなくても、周囲の人々に心から楽しんでもらいたいというモロさんの温かな気持ちが、とても強く伝わってきました。