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No.201  伊藤 信男(いとう のぶお)

鉄道模型運転場 のぞみ会会長

自分が好きで始めたことだから
いっぱい楽しんでもらいたい。
荒川区西尾久4丁目にある鉄道模型常設運転場「のぞみ会」。ここには誰でも自由に鉄道模型を走らせることができる、驚くほど大きなレイアウト(線路を敷き詰め、実際の街並みのように背景なども丁寧に作り込んだもの)が3つもあり、子どもから大人まで幅広い年齢層の鉄道ファンが集う。今回は、そんな多くの鉄道ファンに愛され続けているのぞみ会会長の伊藤信男さん。伊藤さんがのぞみ会をスタートさせたのは、今から約15年も前のことだ。

「子どもの頃から、鉄道が大好きだったんだよね。市電(現在の都電)で通勤していた父親の迎えにかこつけて、いつも駅まで電車を見に行ったりしてね。でも終戦後はとにかく生きるために必死だったから、鉄道遊びなんて贅沢なことは全然できなかった。それからずいぶん経って、社会が落ち着いて、自分も大工の職について、結婚して子どもが生まれて。それで子どもが4~5歳くらいになったときかな、"子どもに鉄道を見せてあげたい"と、鉄道魂が湧き出しちゃってさ(笑)。ベニヤ板で鉄道模型のレイアウトを作るようになったんだよ」

大工として働いてきた伊藤さんだから、モノ作りは大得意。しかも大好きな鉄道だけあって、最初は1畳分のベニヤ板から始まったお手製のレイアウトは、いつしか20畳分にもなった。そうなると、「せっかく作ったんだからドーンと全部並べて、大勢の人に見てもらいたくなったんだよね」と強く思うようになり、伊藤さんは行動を起こす。毎年、お盆と年始にホールを借り、お手製レイアウトの展示会を始めたのだ。
「でも、毎回最終日になると"もう終わりなんだなぁ"ってすごく残念に思うようになっちゃって(笑)。あとレイアウトを運ぶ度に、やっぱり少し壊れちゃうんだよね。だからなんとか常設展示ができないかなぁと思って、のぞみ会を始めたんだよ」

それからのぞみ会はクチコミで評判が広がり、たくさんの鉄道ファンがお気に入りの鉄道模型を走らせにやってくるようになった。現在の西尾久の「運転場」は、屋根と壁くらいしかなかった建物を、伊藤さんが自らの手で延べ床面積80坪の2階建てに改築。そこに写真のような広大なレイアウトを3つ配置し、より多くの人が鉄道模型を走らせられるようにと、線路は全部で50本も並べた。これだけの大規模なレイアウト場は全国でも稀少だ。それにもかかわらず、入場料は無料。鉄道模型を走らせるための参加費だって大人1時間450円ととても安く、しかも子ども料金(1時間200円)もある。

たくさんの人にレイアウトを見てもらいたい。鉄道模型を楽しんでもらいたい。小さな子どもたちも、駄菓子屋へお菓子を買いに行くような気軽さで100円玉を握って参加してもらいたい。「自分が好きで始めたことだからさ。子どもも大人も、みんないっぱい楽しんでもらいたいよね」と、伊藤さんは語る。のぞみ会には、こうした損得なしに"純粋に楽しんでほしい"という伊藤さんの思いが満ち溢れている。だからのぞみ会は、多くの鉄道ファンが集い、愛される素敵な場となったのだろう。土日には近郊の方々だけでなく、九州や北海道のファンも訪れるという。「そんな遠くからわざわざ来てくれるなんてさ、本当にうれしいよ。のぞみ会をやってよかったなぁ、って思うよね」。伊藤さんは笑いながら語ってくれた。

そんな伊藤さんは、戦後の昭和21年から荒川区に在住している"荒川区のベテラン"。もちろん都電荒川線は大好きな鉄道のひとつで、数年前から本物そっくりの大型模型を作り、日暮里サニーホール、ムーブ町屋、荒川電車営業所、伊勢元酒店、菓匠明美など沿線の施設やお店に寄贈している。荒川電車営業所からは感謝状が贈られるなど、とても喜ばれているそうだ。

「都電荒川線の模型ものぞみ会のレイアウトも、作っててすごく楽しい。それで、みんなに見てもらえるからもっと楽しくなる。のぞみ会は、自分の鉄道好きが始まった頃からの夢だったからさ、自分が一番楽しんでるんじゃないかな(笑)。頑張って、できるだけ続けていきたいと思うよ」

終始、屈託ない笑顔で話を聞かせてくれた伊藤さん。とても楽しく、温かい活力が伝わってくる素敵な人でした。
のぞみ会 荒川区西尾久4-15-12 TEL:3893-4089
http://www.nozomikai.net/
月~金:予約制(全館貸切)
土・日・祝:正午~午後6時