スタイリスト
スタイリストの仕事は 「人を輝かせる」こと |
袴田能生さんは、表現力とセンスに富んだ気鋭のスタイリスト。これまでに、『smart』、『MEN'S-NONNO』といった男性ファッション誌をはじめ、丸井やユニクロのキャンペーン広告、スキマスイッチ、スガシカオ、オダギリジョーなど、ミュージシャンやアーティストが着用する衣装のコーディネートのほか、ブランドのコンサルティングなども手掛けてきた。
スタイリストを目指すきっかけは、「日暮里でバーバリー・ショップを営んでいた家庭と、高校時代の影響ですね」。
父親の仕事を見て育った袴田さんにとって、ファッションの世界に身を置くことは、自ら望んだ既定路線。小さいころからミシンの音を聴き、祖母が使っていたミシンを譲り受け、見よう見真似で始めて洋服に対する興味の芽を育んできた。
袴田さんが、スタイリストになることを意識したのは、高校3年生のとき。
「美大に進んで絵を勉強することも考えましたが、コラージュ(切り貼り)する面白さが、洋服を組み合わせていくスタイリストの仕事に似ているのでは・・・と気がついたんです」
服飾の専門学校を卒業すると、尊敬するスタイリストの長瀬哲朗さんに師事。アシスタントを3年ほど務めた。スタイリストとして独り立ちしたのは、今から6年前のこと。
さらに、先般、映画のスタイリングに初挑戦したことで、“表現の仕方”や“スタイリストの立ち位置”について、あらためて見つめ直すことができたという。
「ファッション誌は、ウソをつくというか、つくり込みながら華やかに見せていく仕事であって、良くも悪くも、スタイリストの存在が大きいんですね。ところが映画は、徹底してリアリティーを追求していきます。洋服によって、登場人物の人間性や生活環境を浮き上がらせていかなければなりません。映画におけるスタイリストは、あくまでも裏方のひとりに過ぎず、後ろにいるべき存在なのですが、その職人的な部分に面白さを感じたんです。スタイリストの仕事は、自分が輝くことではなく、人を輝かせることなんだとあらためて感じました」
「『これだけしかやらない』と決めつけたくはない」と語る袴田さん。今後、さまざまなフィールドで、袴田さんのアイデアとセンスを目にすることができるだろう。