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No.165  田代 貢(たしろ みつぐ)

荒川の子から世界チャンピオン・・・
6つの小学校で囲碁教室

荒川区で囲碁連盟を立ち上げた功労者です。

福岡県生まれ。地元の三池工業高校を卒業後、日本製鉄から三池鉱山へ。

「碁を始めたのは高校時代。実家に母の兄の遺品である立派な碁盤があったんです。日鉄の寮では先輩に鍛えられました」

1960年の三池争議の労働運動の責任を取るかたちで退社。荒川へ。

趣味の碁を楽しもうと、勤労者囲碁連盟を作ろうとしたところ、区教委の仲介もあって、他の愛棋家団体と合流。66年に「荒川区囲碁連盟」を発足させました。

会員は当時も500人を超えていました。

ただの親睦団体ではありません。区内には名人戦、本因坊戦、十傑戦の三つのタイトル戦があり、教育委員会、日本棋院支部、連盟主催の行事として定着しています。

荒川区文化総合講座での囲碁の指導、子どもたちへの普及活動のほか、日朝親善のための囲碁交流会なども実施。活動の場は国内にとどまりません。

自身、7段の腕前。ちなみに、夫人とも碁が縁で出会ったとか。

囲碁は世界中に広がったものの、日本の囲碁は韓国、中国に押され気味です。

強い棋士を育てるには、小さい頃からの教育が何より大切なのです。

「韓国では、囲碁の才能がある子どもは義務教育が免除されます。小学校の塾に入る前に、まず、囲碁塾に入る習慣があるんです。碁会所も日本の喫茶店並みにあります。それほど囲碁に熱心なんです」

ちょうど日本の松井、イチローが米国のメジャーを目指したように、韓国、中国の子どもたちは、日本での囲碁の成功をめざします。

テレビゲーム世代の日本の子どもたち。そんな子どもたちの間に最近、囲碁ブームが巻き起こっています。

テレビ東京が放映している子ども向けアニメ「ヒカルの碁」という番組がきっかけでした。その影響で、昨年町屋文化センター等で開かれた「ちびっ子囲碁教室」には、定員をオーバーする400人もの児童が殺到しました。

田代さんは現在、区内六つの小学校で総合学習の時間等に囲碁を教えています。

「碁のいいところは、右脳を発達させること。それに、集中力がつき、礼儀もよくなりますよ」

さて、覇権奪回を目指す日本の囲碁。子どもたちの実力、才能はいかに。

「才能はありますよ。ひらめきが強い子はたくさんいます。小学校入学直後30級だった子どもが、2年生で5段になった例もあります。その子は一手打ったら、周りをキョロキョロ見渡して落ち着かないのですが、次の瞬間、こちらが思わずうなるようなところに打つんです。そんな子がたくさんいるんです」

だから、悲観はしていない、すぐに追いつくと思います、と田代さんは言います。

「そして、世界チャンピオンが、荒川の子どもたちの中から出ればと…。その可能性は十分にありますよ」

文・臼井 理浩
カメラ  岡田 元章