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No.153  小林さわこ・ゆうこ(こばやしさわこ・ゆうこ)

夢へ“舞う”姉妹デュオ
「カラフルポップ」作詞・作曲

何が人生の転機になるか分かりません。

二人の姉妹の場合は、3年前の春、渋谷公会堂で行われた「真心ブラザーズ」のライブを見たことが、歌手になるきっかけでした。

さわこ「こういうライブやりたくない?」

ゆうこ「やりたい!!」

好きなことをただやってみたかった、と二人は声を合わせて言います。でも、失敗を恐れず挑戦してみるのは、若者の特権でもあります。

お祭り騒ぎが大好き。一か月後、「半分遊び、半分真剣」で、友人から買った4トラックのMTR(録音機)に、自分たちが作った歌を吹き込み、テープをレコード会社に郵送。

「これで返事があったらすごいよね」

と二人で顔を見合わせていたら、間もなくその返事が。

レコード会社の担当者から、「他にも、自分たちで作った曲はありますか」と聞かれたとき、「もちろんあります」と、とっさに答えました。

「ホントは2曲しかなかったんですが、『それじゃ、一週間後に他の曲も持ってきて下さい』と言われ、焦って作曲しました」

なかなかの度胸の持ち主です。

今年3月、「君をひとりじめ」でメジャーデビューしました。

荒川区出身の23歳、小林さわこさん(写真左)と、その妹、19歳のゆうこさんからなる姉妹ユニット。

「仲はいいんですよ。ずっと一緒。家では部屋も一緒で、気を使うこともないし、互いに隠し事もありません。末っ子の長男とも仲良くて、周囲からは『あんたたち変だよ』と言われるくらい」

同じ部屋に住んで、同じものを食べて、同じ音楽を聴いて育った二人。姉妹特有の声質が合ったハーモニーが生まれるのも当然かも知れません。二人とも、「東京荒川少年少女合唱隊」に所属していたことが、大きな力となっています。

作曲は姉が、作詞は妹が主に担当します。

「例えば、夏だったら、真っ青な空に大きな入道雲をイメージすると、そこに自然にメロディーがわき出てくるんです」(さわこさん)

ゆうこさんが作った詩の中には、都電荒川線が走る下町の風景も登場します。

絵画的な発想から生まれる自分たちの音楽を「カラフルポップ」と名付けました。確かに、明るく、色彩豊かな、元気が出る曲が特徴です。

二人が照れくさそうに言います。

「出身の荒川第七中学校の先生に頼まれて、後輩の生徒に話をしに行ったんですよ。夢はかなうものだ、という話。その後、後輩たちから『私も頑張ります』という感想文をもらって、すごくうれしかった。私たちこそもっと頑張らなくては」

現在の目標は、渋谷公会堂で自分たちのコンサートを開くことです。歌手になるきっかけを作った「真心ブラザーズ」がコンサートを開いたあの場所です。

8月にはセカンドシングル「ひこうき」も発売。澄み渡った二人のハーモニーは、青いカンバスに一筋の飛行機雲が流れていくようです。そこに白い二匹の蝶が自由に飛び回って――そう、「teftef(テフテフ)」というユニット名は、ゆうこさんが高校の古文の教科書で見つけた「蝶」を意味する古語なのです。

読売新聞記者・臼井 理浩