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No.212  斉賀 靖佳(さいが  やすよし)

NPO法人 荒川区高年者クラブ連合会 理事長

「活動する高年者」たちが、喜び合える社会を目指して

高年者同士が支え合う 「友愛活動」の架け橋となる

「NPO法人 荒川区高年者クラブ連合会(以下、荒高連)」は、昭和37年に「荒川区老人クラブ連合会」として結成されました。「老人クラブ」という名称は、「時代にそぐわない」として、のちに「高年者クラブ連合会」に改名。平成14年には、老人クラブとしては全国でただひとつ、「NPO法人」の認可を受けています。
高年者の可能性を引き出し、魅力あるクラブづくりに全力で取組んでいるのが、理事長の斉賀靖佳さんです。
斉賀さんが高年者クラブの活動に関わるようになったのは、平成7年からです。「63歳で定年を迎え、総務の仕事を〝ちょっとだけ〟お手伝いするつもりが、いまでは〝首まで〟どっぷりつかっています(笑)」
斉賀さんは、昭和4年生まれ。終戦の混乱が治まらぬころから、建設設備のシステムエンジニアとしてまい進。中近東など海外にも渡って、建築積算ソフトの構築に従事したそうです。
「定年までの40年間は、地域の活動に参加したことはほとんどなかったし、荒高連のことも知りませんでした(笑)」といいますが、現在は一変。「荒高連」の理事長をはじめ、「東京都老人クラブ連合会 副会長」「西尾久三丁目 町会長」「環境清掃推進委員会・常任理事」など20もの役職に就き、地域交流活動に寄与しています。
「荒高連」が、指定管理者(公の施設の管理を任される団体)となり、「荒川山吹ふれあい館」の受託をするようになったのも(平成17年から)、斉賀さんの尽力があったからです。
「NPO法人になった理由もそうですが、区に面倒を見てもらうだけではいけないと思います。みずからも事業者となって、元気な高年者が地域で働き、知識や経験を生かしていきたいですね。これからの老人クラブは自主自立をかかげて、『活動する高年者クラブ』へと変わっていく必要があるのではないでしょうか。」
山吹ふれあい館の管理者選定の最終プレゼンテーションで最後まで残り、「赤ちゃんから高年者まで利用できる、まったく新しいコミュニティサロン」を目指した「荒高連」の企画が採用されました。
「プレゼンに参加した荒高連のメンバーは、3人合わせて243歳(笑)。どこから手をつけていいのかわからないし、四苦八苦した」そうですが、「地域の支えになりたい」という斉賀さんの思いが、いま、大きく実を結んでいます。

「生涯現役」をモットーに、地域社会の向上を担う

2010年における日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は22.5%で、世界第1位。「5人に1人が高齢者」という社会を迎えています。
それにともない、高齢者の「社会的な孤立」が深刻です。「高齢社会白書」(平成22年度版/内閣府)は「高齢者全体では8割が生きがいを感じているが、友人がいない人では4割、近隣との付き合いのない人では6割にとどまっている」と伝えています。60歳以上の「近所の人たちとの交流」は減少しているとの報告もあり、人とのつながりが希薄になっているのです。
「孤立を防ぐには、地域社会における支え合いが不可欠。同世代同士が喜び合うことが不可欠」と考え、「荒高連」では、スポーツ大会や芸能大会の企画・運営、会報を発行。高年者の支援活動を展開しています。
現在、「荒高連」には、6支部・81クラブ・約8000名が参加。加入率は、14%。東京23区の平均加入率(約10%)を上回っているのは、「荒高連」が高年者活動の中心として期待されているからです。荒川区ではたくさんの高年者が、輪投げ、カラオケ、ペタンク、グラウンドゴルフ、国際交流などの行事に参加しながら、自助・共助・公助の精神を育んでいます。
「荒高連の活動のアイデアを思いついたら、たとえ夜中でさえパソコンを立ち上げ、メモを残したこともあった」という斉賀さん。81歳になったいまも、決して立ち止まることはありません。「生涯現役」をモットーに、すぐに行動する。スケジュールは数ヵ月先まで埋まり、休日もままならない中、それでも斉賀さんは、快活さを失いません。
「ボランティアの一環」と謙遜しますが、高年者を地域活動に引き出す牽引役、まとめ役として、人の「和」と「輪」を広げているのです。