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No.199  武島 鳳珠(たけしま ほうじゅ)

詩吟 鳳風流 日本詩吟文化学院長

技と心が一体となった詩吟を、
これからも追求していきたい。

学生の頃から、詩吟の世界はとても身近にあった

詩吟は、江戸時代後期に始まった日本の伝統芸能のひとつ。漢詩や和歌などを、一般的な歌のようにリズムやメロディに乗せて歌うのではなく、詩文の朗読を基本にして、朗読の後に独特の節回しで吟ずる(歌う)。そうすることで、詩情を効果的に表現するのが詩吟の大きな特徴だ。今回の「荒川の人」は、そんな詩吟の世界で活躍している武島鳳珠さん。荒川区で生まれ育ち、今も在住 している生粋の荒川っ子だ。

武島さんの母親は、吟詠家の高橋鳳頌さん。そのため、学生時代から詩吟の世界がごく身近にあった。

「詩吟を始めたのは、20歳からです。20歳の女の子に詩吟はやっぱり難しく、最初はよく分からないから漠然と歌っていた、というのが本音ですね(笑)。でも、もともと歌うことがすごく好きだったので、少しずつ馴染むことができました。母が日課のように、朝から詩吟の声を出していたも効果があったと思いますよ(笑)」

教える側に立ったことで詩吟への気持ちが強くなった

大学時代に幼い頃からの夢だった歌手の勉強をしたり、卒業後には勤めを辞めて劇団で役者をしていたこともあった。でも、やはり詩吟はいつも武島さんの側にあった。そして、武島さんは「改めて、詩吟ときちんと向き合ってみようと思いました」と、本格的に詩吟の道を歩む。

それからは、劇団時代に出会った作曲家の曽根幸明氏に歌唱指導を受けた。しばらくして母親も師事する吟詠家の小林鳳風氏が日本詩吟文化学院を創設し、武島さんは同院に所属。鳳風流の吟詠家として、さらに修行に励んでいく。平成13年には荒川区の老人福祉センターの朗読教室の講師となり、今度は教える側に立った。これが、武島さんの詩吟と朗読への気持ちをより強くした。

「人に教えることで、詩吟への責任感を強く感じ、もっともっと懸命に"詩吟の世界に踏み込みたい"と思うようになりました。教室のみなさんのおかげで、詩吟と向き合ったときの初心に戻ることができ、気持ちがとても強くなりました。また、教室を卒業したみなさんが新たに朗読のサークルをふたつも立ち上げて、私を先生として呼んでくださって・・・。とっても感謝しています」

それからの武島さんは、平成19年にクラウンレコード主催の全国コンクールで第1位入賞、平成20年には日本詩吟協会コンクールで第1位・文部科学大臣賞を受賞するなど、朗読だけではなく、詩吟の世界で目を見張る活躍を続けている。
「詩吟は全身を使って声を出すため、少しでも気持ちに迷いがあると、すぐ に歌に現れてしまいます。もちろん技も大事ですが、うまく歌おうとするだけではダメ。技と心が一体となった詩吟を、これからも追求していきたいですね。 私は、まだまだできていません。詩吟は、本当に奥が深くて、簡単にはいかな いもの。でも、だからこそ"もっと挑戦したい!"という気持ちにさせてくれます。それが、私には大きな魅力です」

今後は、「若い人たちにも興味を持ってもらえるような"開けた詩吟"も開拓していきたい」と語る。現在、日本詩吟文化学院三代目学院長である武島さんは、詩吟の未来もしっかりと見つめていた。武島さんの手によって、詩吟の世界に新しい道が開けることを期待したい。