日本画家
長く険しい日本画家の道のりを ひたすら邁進し続ける |
「小さい頃から、答案用紙の裏に動物の絵を描いたり、いろいろな漫画を写したりと、絵を描くことは大好きでしたね。日本画の道に進んだのは、祖父の影響が大きかったと思います」星さんの祖父は、日本画家を夢見ていたが大事な家業を継いだ。そんな思いもあってか、自宅の襖をキャンバスに、山々や龍などの水墨画をよく描いていたという。そして星さんも、一緒になって龍を鉛筆で模写したりしていたそうだ。物心つく前から、日本画に触れていたこと。その経験が、大学進学を考えていた高校3年生当時の星さんの背中を、いつの間にか押していた。
「大学から美術の道を目指そうと思ったのですが、不思議と日本画以外は考えなかったですね。でも・・・合格するまでは本当に大変だったなぁ(笑)」
冒頭でも記したように、日本画は画材から特殊であり、画材の扱いも含めた技術の地道な積み重ねが何より大事な世界。たとえば星さんが進んだ東京芸大絵画科日本画専攻は「平均3浪」と言われるほどハードルが高く、現役合格する人はほぼ皆無。星さんも3年間、美術系予備校でみっちりと日本画の基本と技術を学び難関を突破した。その後はさらに難関の大学院に進み、掛け軸や仏画の模写を中心にした日本画を描く技術を勉強しつつ、やはりここでも岩絵の具を扱うための工芸的な技術習得の努力を重ねていった。
「特に大学院はとてもハードでしたが、大学生活は本当に楽しかったですね。日本画の画材に初めて存分に触れることができたときの喜びは、今でも忘れられません。岩絵の具は石の粒子が剥き出しになって、とても自然な色を見せてくれます。世界で一番綺麗な絵の具だと思いますね。そんな素晴らしい画材で絵を描ける・・・。 40半ばを過ぎた現在もまったく変わっていませんが、それが私の感じる日本画の大きな魅力です」
今までも十分に長い道のりだったにもかかわらず、もっと先を見据えて、力強く、そして楽しそうに笑顔で語ってくれた星さん。昔から掲げる“見たものを自然に描く”という自身のテーマが、これまでの経験とこれからのさらなる邁進によってどのように昇華し、日本画として描かれていくのかが楽しみでならない。