春の息吹を感じさせる響き 安らぎ生む「心との共鳴」
津軽三味線・民謡は、厳冬のつらく耐える切なさを伝えるだけではない。凍てつく冬を乗り越え、春の息吹を感じさせる響きであり、唄である---青森県北津軽郡に生まれ育った演奏家・民謡歌手の福祉豊秋さん。「津軽の春」を感じさせる音楽活動は30年におよび、その名は全国に響き渡っている。現在、荒川区を拠点に活発な活動を続け、3日にはムーブ町屋でコンサートを開く。区内では一昨年に続く2回目の演奏会で、今回も福士さんの"津軽の世界"を多くの人が楽しみにしている。研ぎ澄まされた天性と感性
福士さんの飾らない風ぼうと破顔は、たまらなく人を引きつける魅力がある
心の安らぎを覚える演奏と唄
津軽三味線の一の糸、二の糸、三の糸。福士さんの左指はこの3本の糸に沿って巧みな動きを見せる。右手に持った鼈甲べっこうの撥ばちで、糸を爪弾つまびいた瞬間、福士さんの心は旋律の奥深くへ入っていき、「無」の状態になるという。それが聴く人の心と共鳴し、一体となったとき、多くの人が安らぎを覚える。
この30年間、人々の中に入って演奏するという福士さんのスタイルは、確実に津軽三味線と民謡のファンを増やしてきた。
一方、テレビなどで脚光を浴びる三味線の若手演奏家たちが、福士さんを慕って、よく自宅を訪ねてくる。そんな若い人たちに、福士さんは折に触れて音楽活動に取り組む姿勢を伝える。陰ながら後進の指導的役割も果たしてきた。
ムーブ町屋でコンサート
3日のムーブ町屋では「福士ファミリー・ひなまつりコンサート」と題して、福士さんと由美子(二代目・成田雲竹女)さん、長女・あきみさんの家族3人が中心となって三味線演奏と民謡を披露する。あきみさんは、幼くして津軽民謡に親しみ、小学生のときから全国大会で数々の賞を受賞している。そのあきみさんの唄も見どころだ。