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No.169  松田 志行(まつだ しこう)


「大学は商学部。だから、製造技術は30歳から職人に弟子入りし、修業しました」と語る松田さん

すべの人に自転車に乗る楽しさを知ってほしい

「フレームビルダー」――業界の人々は、あこがれと尊敬の念を込め彼をこう呼ぶ。マツダ自転車工場社長・松田志行さんがオーダー自転車を製作するようになって30年、現在はプロ競輪選手約90人から高度なバランスを要求されるフレームを受注、その高い技術力は絶大な信頼を得ている。

また、日本自転車普及協会主催の『ザ・ハンドメイド・バイシクル・フェア』では、コンテストが始まった平成7年から4年連続で最優秀賞等を受賞。業界で初めてフレーム設計にコンピューターCADシステムを導入し、バッグがスマートに内蔵できるビジネスマン向け自転車、重い荷物を載せてもふらつかない自転車、高齢者にも乗りやすく、安全性を高めたフレーム構造の自転車などオリジナリティー豊かな自転車を開発。平成12年には荒川区マイスター表彰を受賞している。
自転車の本体フレームは、乗る人の目的や体型にあわせて設計し、組み立てる

障害者にも自転車に乗れる喜びを

マツダ自転車工場を父から受け継いだ後、京成新三河島駅近くの高架下に店舗兼工場を移転。というのも深夜まで作業をすることも多く、作業音が近所に迷惑をかけないようにという配慮から。スタッフとともに日夜を問わず働いても1カ月に完成できるオーダー自転車は10台ほどという松田さんからは、職人としてのかたくななまでのこだわり、そして、自転車をこよなく愛する優しさが漂う。

いいものを作るという信念は、やはり自転車職人として誇りを持ち、質の高い自転車作りを続けている父親ゆずり、そして「すべての人に風を感じて走る爽快感、自転車に乗る楽しさと喜びを知ってほしい」という松田さんの思いによる。

そんな松田さんが今取り組んでいるのは身体障害者用の自転車。「障害の程度は一人ひとり違う。だからこそ、オーダー自転車が必要なのです」と言う。彼は1カ月に一度、障害者のサイクリングクラブのメンバーとサイクリングをするために東京都障害者スポーツセンターへボランティアに出かける。健常者の人と同じように自転車に乗りたい――障害者の人たちのそんな夢をかなえる自転車を作れる全国でも数少ない一人だ。
荒川税務署入口の高架下にある工場兼店舗

自転車の街・荒川区を目指して活躍

そして、松田さんが取り組んでいるもう一つの大きな仕事は、自転車による街興し――自転車の街・荒川区をPRすることである。平成14年に話題になった交通事故防止の安全性に配慮して光る自転車を作ったり、地元周辺の中学校での「あらかわ学校職人教室」で、もの作りを指導している。また、この10月12日に開催された『あらかわ自転車の祭典2003』では、実行委員として環境や健康に優しい自転車の普及活動につとめた。

そうした幅広い普及活動が認められ、今年度の『東京都優秀技能者知事賞』を11月13日に受賞する。

「けっしてもうかる商売とは思いませんけど、蕫幸せ﨟って何かって考えた時、好きなことをやって飯が食えればいい(笑)。自転車屋の息子に生まれて、自分は自転車のことしか知らない。自分が作った自転車でお客さんが満足してくれることが一番うれしいですね」
平成7年に最優秀賞を受賞したシティサイクルのスポーツタイプ

超低床フレーム採用で高齢者にも乗りやすく、軽い自転車

マツダ自転車工場 TEL3807 ― 5631 http://www.tokyo-arakawa.com/matsuda/