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No.167  徳本 和雄(とくもと かずお)

地元ならではの「こだわり」都電グッズを企画製造

荒川のシンボル的存在の都電荒川線。今では東京で唯一の路面電車として、鉄道ファンにも根強い人気がある路線で、昔から「チンチン電車」と呼ばれて親しまれてきました。その都電の姿を、ミニチュアで再現したペーパーウェイトやピンバッジ、キーリングといったオリジナルグッズを企画製造しているのが、荒川1丁目の徳栄商事社長、徳本和雄さんです。

幼い日の思い出が都電に
静岡で生まれ育った徳本さん。チャンバラや川遊びが好きだった少年の一番のお気に入りは、海沿いを走る軽便鉄道(70年に廃止になった静岡鉄道駿遠線)の1両だて気動(=ディーゼル)車を眺めることでした。

30年前上京して都電を見た徳本さんは、幼い日のあこがれの1両だて気動車を思い出して、懐かしさが込み上げてきたといいます。

創作の源は「ひらめき」
徳本さんが脱サラして、荒川で徳栄商事を創業したのは77年のこと。それまで勤めていた記念品製造会社のノウハウを生かし、トロフィーやメダルの企画製造を始めました。ところがバブル崩壊後、記念品の需要が減少。新しい事業を考えていた時、ふと「都電グッズを作ってみてはどうだろう」とひらめいたといいます。

「それまで都電グッズを作っているところはほかになかった。地元のシンボルだし、これはいいかも知れない、と思いました」

製造にあたってのこだわりは、「いかに実物の特徴をつかむか」。そのために、なんと江ノ電10形という、本物の電車をデザインした人に原画を依頼しているとか。リアルさを追求する一方で、八の字のレールを走る昔懐かしいブリキ製の都電、携帯電話にぴったりの液晶画面クリーナー付ストラップなど、徳本さんならではの遊び心あふれる商品を開発してきました。

人の輪が広がる楽しみ
今では都電のほかにも、JR・私鉄・営団の鉄道グッズや、都バスチョロQなど多種多彩な商品を企画製造している徳本さんは、鉄道ファンやバスファンの間では有名人。「鉄道グッズでは、全国区の会社でね(笑)」と胸を張る徳栄商事の商品の数々は、鉄道雑誌などでひんぱんに紹介されています。徳本さんご本人も、「たびてつ友の会」というマンガに登場人物の一人として描かれているほどです。

注文は、ホームページを見た全国各地のお客さんから入ります。また、事務所には熊本など遠く地方からも足を運ぶお客さんや、都電グッズを1つ2つ買うつもりで来て、壁一杯の商品に目を丸くし、何時間も過ごして帰るお客さんも多いとか。

「鉄道のグッズ開発は、もうすぐなくなる路線、あるいは新しく誕生した路線が基本」と語る徳本さん。99年に廃止された蒲原鉄道や、00年に鉄道ファンが優れた車両に対して贈る「ブルーリボン賞」を受賞した寝台客車・カシオペアのグッズなども開発し、好評を得ています。廃止される路線を惜しむ気持ちや、新路線の誕生を迎える高揚感、鉄道ファンの夢が、徳栄商事の商品にはつまっています。

「楽しんでもらうことが商売には必要だと思います。ここに来てくれるお客さんと話しているとたくさん情報をもらえますし、こっちもすごくうれしいです。私自身、この仕事をしていて良かったと思うのはグッズを通してどんどん人の輪が広がっていくことですね。人と人とのつながりこそ、商売にとってかけがえのない財産ですから」

徳栄商事 ℡3891-9051  http://www.tokueinet.co.jp