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No.109  山田 美保子(やまだ みほこ)

三年で下町大好きに一変
番組、コラムで人気の山の手育ち

「自分は絶対、下町には合わないと思い込んでいたんです。でも、住んでみると、意外に『下町体質』であることが分かりました」

東京・世田谷の出身。大学は渋谷の青山学院で、「渋谷より北に住んだことがない」という山の手育ち。おまけに日本テレビの「恋のから騒ぎ」「踊る!さんま御殿!!」を始め、人気テレビ番組をいくつも手がける放送作家であり、女性雑誌などに多くの連載を抱える売れっ子のコラムニストでもあります。最近では『友情、愛情、ああ無情』(小学館文庫)を出版しました。こうした経歴からすれば、そう思うのも無理はないのかもしれません。ところが─。

「主人の実家に同居することになり、町屋に引っ越したのが三年前。食べ物屋さんは多いし、物価は安い。それまで食べたことの無かった、もんじゃ焼きも、今では主人より上手に焼けます」

フランス料理やイタリア料理が大好きだったのが、うそのように、下町の暮らしやすさに「どっぷり漬かってしまった」ようです。

放送業界に足を踏み入れたのは、大学卒業後、ラジオのキャスタードライバーに選ばれたのが、きっかけ。車で各地に出かけ、リポートする仕事ですが、その時よく区内の商店などを訪れたと言います。

「ラジオをよく聞いてくださるのは個人経営の商店主さん。毒蝮三太夫さんと一緒に下町のお店を訪ねるという企画で、よく荒川に来ました。でも、その時は、自分は住まないだろうなって、他人事のように思っていました」

三十代を迎え、テレビ番組の構成を手がけるようになっても、扱う番組は「OH!エルくらぶ」「EXテレビ」など都会的な情報番組ばかり。下町の雰囲気とは遠い世界からの転居に不安はありませんでしたか?

「ご近所同士で夜、飲みに行ったり、カラオケに出かける付き合いの良さに、最初は戸惑いもありました。でも、そうやって近所の方と世間話をしているのが、とても楽しいんですよ」

今では、近くのもんじゃ焼き屋に通い、店のご主人から競輪の手ほどきを受けるなど立派な下町人。テレビ番組で下町の特集があると智恵を貸したり、雑誌で意外な穴場を紹介したりと、仕事の幅を広げる上でも、荒川住まいは役立っているようです。

「どうして、そんなに詳しいのと不思議がられるほど、仕事の面でも下町テイストは外せませんね。放送業界の人からは『どうして、そんな所に引っ込んじゃったの?』と聞かれますが、車なら銀座はすぐだし、成田空港も近い。意外に交通の便が良いと、逆に勧めています」

そして、何より気に入っているのが、何事も気取らず飾らない、親しみやすい雰囲気のようです。

「昔はサンダル履きで外に出ることもありませんでしたが、引っ越した直後に、主人の母がいきなりサンダルを買ってくれまして……。履いてみると、意外に楽チンなんですね。今では、西日暮里ぐらいまで平気でサンダルで出かけちゃいます」

最近では「下町広報委員」を自称。荒川の良さをコラムなどでPRする役割も買って出ています。

「路地裏で鉢植えをたくさんブロック塀から吊るしているのを、よく見かけますが、最近、流行のコンテナ・ガーデニングの走りですよね。だから『元祖ガーデニングの町』って名付けたんです」

彼女が荒川の魅力を紹介するテレビ番組が生まれるのも、そう遠い先のことではないかもしれません。

読売新聞記者・多葉田 聡
力メラ・岡田 元章