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No.70  英 洋子(はなぶさ ようこ)

『レディー』物が大ヒット
「活気ある町」で新婚第一歩

「漫画に興味を持ちはじめたのは、二、三歳のころからでした。いたずら書きのようなもので、まず愛らしい顔を描き、そこに三角形のスカートを描く。お人形さんの絵ですね」

杉並区下井草の出身。五歳で世田谷区烏山に越しました。

小学校に入って初めて描いたのは馬の絵。二年生で「少女フレンド」を読み始め、そのころからスタイル画のようなものを描き始めます。「目が大きくて手足が細い。きれいな洋服を看た女の子です。六年生の時に、仲間たちと手作りで、漫画の本を出しました」

小学校三年から中学校三年までは、父の仕事の関係で大阪で生活、その後は神奈川県大和市に移り、座間中から県立大和高校に進みます。

「高校の時に漫画同好会に入りました。そこで初めてペンとインクを使いました。大学を受験する時は悩みました。小さなころからピアノを習ってましたから、本当は音楽大学に進みたかったのです。でも才能がいま一つでしてね。結局、歴史に興味があったことから、国学院の文学部史学斜に入りました」

その大学時代に漫画家への道を開くことになります。

「学生狩代に病気で二年間休学しましてね。自宅で療養している時に描いて投稿、採用されました。そして卒業となりますが、二年遅れの二十四歳でしょ。遅れた理由が病気でしょ。そして就職難でしょ。これは難しいかなと判断して、漫画家への道を選びました」

デビュー作は一九七八年、「ひとみ」の臨時増刊「テジール」に掲載された「恋はハッピー・スノーに乗って」。代表作は「レディー」です。この作品は、雑誌に連載後、単行本十二巻が発売されました。この物語の主人公は、リンという名の幼い少女で、日本人の母が亡くなり、父親の国・イギリスに行きますが、貴族である父の家には様々な苦労が待っています。母の違う姉らと暮らしながら、美しく優しいレディーに成長していくという物語です。

八七年に「レディ・レディ」というタイトルで、また翌年には「ハロー・レディ・リン」という題名で、テレビ・アニメ化された大ヒット作です。リンは人形として売り出され、また、同時にキャラクター商品化されたアクセサリー「秘密のカギ・ペンダント」も、読者の少女たちに好まれています。

もう一つの人気作品「タイム・プリンセス」─。主人公は時野末来(ときの・みき)という名の孤独な中学一年生。占い師に贈られた不思議な宝石箱を開けることによってタイム・スリップします。その夢の旅の先は、古代ギリシャ、古代エジプト、そして革命時代のフランス、さらに恐竜の時代から、時に平安時代へ。そこで様々な体験をする物語です。また「占いと冒険のマジカル・ハーモニー」というキャッチフレーズの「屋根裏部屋へようこそ」という作品もあります。

読者は小学生から中学生。「子供たちに夢を与える作品を描き続けてきました。これからも夢を与え続けたいと思っています」と張り切っています。

三十九歳。この八月に結婚したばかりで、ご主人が生まれ育った荒川区南千住で新婚生活を始めました。「まだ分かりませんが、土のにおいがして、のんびりしていた大和市に比べると、荒川は、にぎやかで、活気にあふれる町という印象でしょうか。スーパーマーケットではなく、いろんなお店で買い物が出来ます」

読売新聞記者・寺村  敏
カメラ・水谷 昭士